嗅球摘出ラットの脳内モノアミン遊離に及ぼす Milnacipranの影響
第37回 日本神経精神薬理学会
2007年7月11~13日
於:札幌コンベンションセンター
| 【演題】 | 嗅球摘出ラットの脳内モノアミン遊離に及ぼす Milnacipranの影響 |
| 【発表者】 | 村澤 寛泰、中谷 晶子、松澤 京子、松田 智美、松下 久美、豊吉 亨、山口 和政 株式会社日本バイオリサーチセンター |
| 【背景・目的】 | 代表的な精神疾患の一つであるうつ病の生涯有病率は約15%と非常に高く、近年、急増している自殺者のうちの60~70%がうつ病であるといわれている。自殺の予防対策として、うつ病の病態解明と新しい予防法および治療法の開発が不可欠である。現在、うつ病の治療には、SSRIおよび SNRIなどの抗うつ薬が使用されており、この抗うつ薬の治療メカニズムとして、細胞内の様々なシグナル伝達系が注目さている。我々はこれまでに、うつ病モデルの一つとして用いられている嗅球摘出ラットの情動過多に対して、抗うつ薬(SNRI)の Milnacipran(トレドミン®錠)が改善作用を示すことを明らかにしてきた1- 3)。今回、Milnacipranによる情動過多の改善作用のメカニズムを明確にするため、嗅球摘出ラットの脳内モノアミン遊離に及ぼす Milnacipranの影響について in vivo microdialysis法を用いて検討した。
さらに、嗅球摘出ラットの情動過多に対して改善作用を示さなかった、抗うつ薬(SSRI)の Paroxetine(パキシル®錠)についても比較検討した。 |
| 【方法】 | 8週齢のCrlj : WIラットの嗅球を吸引して摘出し、情動過多の生じているラットを選択した。媒体(0.5% MC)、Milnacipran(トレドミン®錠) 10 mg/kg(Milnacipran)あるいはParoxetine(パキシル®錠) 10 mg/kg(Paroxetine)の投与1および 7日の投与前および投与後 2時間に情動過多を評価した。評価後、ペントバルビタールナトリウムで麻酔した後、脳定位固定装置に頭部を固定後、ガイドカニューレを内側前頭前野(MFC)および扁桃体(BLA)に挿入した。手術後 4日以降に、ダイアリシスプローブを挿入し、リンゲル液を2 μL/minの流速で灌流し、透析液を 20分毎に回収した。透析液中の NE、DAおよび 5-HT量は HPLC-ECDを用いて測定した。 |
| 【結果】 | 1.Milnacipranの効果嗅球摘出による情動過多の発現は、Milnacipranの単回および反復経口投与により有意な改善が認めたれた。偽手術動物に、Milnacipranを単回経口投与すると、内側前頭前野(MFC)および扁桃体(BLA)の NE、DAおよび 5-HT遊離量の有意な増加が認められた。嗅球摘出動物に、Milnacipranを単回経口投与すると、MFCおよび BLAの NE、DAおよび 5-HT遊離量の有意な増加が認められた。この MFCの DAおよび BLAの NE遊離量の有意な増加は、Milnacipranの反復経口投与により有意な抑制が認められた。
2.Paroxetineの効果 嗅球摘出による情動過多の発現は、Paroxetineの単回および反復経口投与により有意な改善は認められなかった。 偽手術動物に、Paroxetineを単回経口投与すると、MFCおよび BLAの NE、DAおよび 5-HT遊離量の有意な増加が認められた。 嗅球摘出動物に、Paroxetineを単回経口投与すると、MFCおよび BLAの NE、DAおよび 5-HT遊離量の有意な増加が認められた。 このNE、DAおよび 5-HT遊離量の有意な増加は、Paroxetineの反復経口投与により有意な抑制が認められた。 さらに、Paroxetineの反復経口投与により 5-HT基礎遊離量の有意な増加が認められた。 また、測定終了時(Paroxetineの単回および反復経口投与)の嗅球摘出動物は、不安の増強(全身の筋緊張および不動化)および情動過多の増悪が認められた。 |
| 【考察】 | 嗅球摘出動物の Milnacipranによる情動過多の改善作用は、持続的、且つ軽度な 5-HT遊離量の増加を維持することにより、嗅球摘出により機能が障害されたNEおよび DA機能を正常状態へ回復させることにより発現している可能性が示唆された。情動過多に対して改善が認められなかった Paroxetineの要因としては、Paroxetineの単回経口投与による異常な 5-HT遊離量の増加に伴い、不安および情動過多が増悪することが考えられる。さらに Paroxetineの反復経口投与により異常な 5-HT遊離量の増加が持続するため 5-HT神経終末に対する 5-HTの反応性が低下あるいは消失している可能性などが考えられる。以上のことから、持続的、且つ軽度な 5-HT遊離量の増加の維持に伴った 5-HT機能の回復(機能が障害されたNEおよび DA神経系に対する5-HTの抑制による機能の正常化)を持ち合わせた抗うつ薬を選択することが、うつ病の治療および自殺(自殺念慮・自殺企図)予防につながる可能性が示唆された。 |
| 【文献】 | 1) Saitoh A et al. (2007) Psychopharmacol., 194 : 8572) Yamaguchi K et al. (2005) J Pharmacol. Sciences, 97, Supplement I : P-100653) Yamaguchi K et al. (2007) Folia Pharmacol. Jpn, in press |
ラットの嗅球摘出による24時間の睡眠-覚醒周期の変動
第37回 日本神経精神薬理学会
2007年7月11~13日
於:札幌コンベンションセンター
| 【演題】 | ラットの嗅球摘出による24時間の睡眠-覚醒周期の変動 |
| 【発表者】 | 松澤 京子、中谷 晶子、村澤 寛泰、松田 智美、豊吉 亨、山口 和政 株式会社日本バイオリサーチセンター |
| 【背景・目的】 | 現在までに我々は、嗅球摘出後、暗所下で狭いケージに2週間以上飼育したラット(OBラット)では情動過多および不安症状が発現すること、また、これらの症状は、SSRIのfluvoxamineおよびSNRIのmilnacipranの反復経口投与により改善されることを報告してきた。また、このときOBラットでは中脳縫線核におけるセロトニン陽性細胞の減少が生じることを報告している。一方、中脳縫線核のセロトニンニューロンは、中枢性リズム形成機構と密接に関わっており、特に覚醒においてその活動が活発であることが報告されてきている。このようなことから、今回、OBラットの脳波においてリズム障害の検討を行うこととした。 |
| 【方法】 | 8週齢のCrl : CD(SD)ラット(雄) を用い嗅球を摘出した動物、偽手術を施した動物のそれぞれについて、暗所・閉所と12時間明暗サイクル下の2通りに分けて飼育し、嗅球摘出手術または偽手術後2週に、また、嗅球摘出後暗所・閉所3週間飼育動物へのMilnacipran の7日間反復経口投与後に、前頭皮質および頭頂皮質(海馬周辺)より脳波を、頸部僧帽筋より筋電位を集積した。集積した脳波・筋電位は、睡眠解析ソフトSleep Sign ver.2.0 (キッセイコムテック)を用いて解析し、24時間の睡眠-覚醒サイクルを、Non-REM睡眠、REM睡眠、覚醒の3段階に分け、各ステージの相対量の割合および持続時間を算出した。このデータを、環境因子によるリズム(明暗サイクル、歩行運動)の有無による影響および嗅球摘出による影響の2つの観点で解析した。 |
| 【結果】 | 1.環境因子によるリズムの有無による影響各意識水準の量的比較では、リズムの影響をなくした場合、リズムの影響を受けた場合の24時間と比較してNon-REM睡眠量の有意な減少と覚醒量の有意な増加がみられた。一方リズムの影響を受けた場合の暗期に比べて睡眠量の有意な増加がみられた。また、各意識水準の持続時間の比較では、リズムの影響をなくした場合、リズムの影響を受けた場合の暗期と比較してNon-REM睡眠の持続時間の有意な延長がみられた。すなわち、リズムの欠如により睡眠-覚醒パターンが暗期のものに近づくことを示している。
2.嗅球摘出による影響 嗅球摘出による影響は、環境因子によるリズム(明暗サイクル、歩行運動)の有無において検討した。 明暗サイクルがある状態で嗅球摘出動物において、偽手術動物に比べて、明期の睡眠および覚醒量に差はみられなかったが、暗期にNon-REM睡眠量の有意な減少と覚醒量の有意な増加がみられた。 また、各意識水準の持続時間は、嗅球を摘出すると、明期にREM睡眠および覚醒の持続時間が有意に短縮し、暗期に覚醒の持続時間の有意な延長がみられた。 明暗サイクルがない状態すなわち、暗所飼育の嗅球摘出動物において、偽手術動物に比べて、睡眠および覚醒の量に変化は見られなかった。 しかし、各意識水準の持続時間は、嗅球摘出動物において、偽手術動物と比べてNon-REM睡眠の持続時間および覚醒の持続時間の有意な延長がみられた。 3. milnacipranの影響 各意識水準の量的比較では、milnacipranの投与により、投与前に比べて睡眠および覚醒の相対量に変化はみられなかった。 また、各意識水準の持続時間の比較では、 milnacipran 10 mg/kgの投与により、投与前に比べて、持続時間に有意な変化はみられなかったものの、覚醒の持続時間が短縮する傾向がみられた。 |
| 【考察】 | 明暗サイクルおよび歩行運動を欠如させると、睡眠-覚醒パターンは暗期のものに近づいた。嗅球を摘出すると、環境因子によるリズムの影響の有無によって偽手術動物に対して各意識水準の量的な変化が異なった。すなわち、OB動物間でも明暗サイクルおよび歩行運動を欠如させるとNon-REM睡眠と覚醒の持続時間の延長がみられた。その原因として、環境因子によるリズム(12時間明暗サイクル、歩行運動)の変動と嗅球摘出により中脳背側縫線核セロトニン陽性神経細胞数が減少することが考えられる。一方、milnacipran 10 mg/kgの投与によりセロトニン受容体の感受性を増加させると覚醒の持続時間が短縮し、中脳背側縫線核ではセロトニン陽性神経細胞数が増加傾向を示したことから、セロトニンが関与する覚醒リズム障害をmilnacipranが調整する可能性が考えられる。 |
| 【文献】 | 1) Saitoh A et al. (2007) Psychopharmacol., 194 : 857 |
嗅球摘出ラットの痛覚過敏反応に対する抗うつ薬の効果
第37回 日本神経精神薬理学会
2007年7月11~13日
於:札幌コンベンションセンター
| 【演題】 | 嗅球摘出ラットの痛覚過敏反応に対する抗うつ薬の効果 |
| 【発表者】 | 松田 智美1)、村澤 寛泰1)、中谷 晶子1)、松澤 京子1)、豊吉 亨1)、山口 和政1)、巽 義美2)、巽 壮生2) 1) 株式会社日本バイオリサーチセンター、2) 株式会社 奈良病理研究所 |
| 【背景・目的】 | 近年、痛みに関する研究において感覚的側面のみではなく情動的側面にも目が向けられてきている。つまり、感覚的に痛みを除去するだけでなく、痛みによって生じる不安や抑うつ等の不快な情動も抑制することが、疼痛治療に求められている。現在、整形外科領域の痛みの軽減に、抗うつ薬であるデジレル錠(trazodone)、レジオミール錠(maprotiline)、トリプタノール錠(amitriptyline)、デプロメール錠(fluvoxamine)、パキシル錠(paroxetine)、トレドミン錠(milnacipran)などが用いられている。今回、我々は疼痛緩和の目的での抗うつ薬使用の妥当性を検討するために、情動過多を生じた嗅球摘出ラットを用いて、その痛覚過敏反応に対する上記の抗うつ薬の効果を検討した。 |
| 【方法】 | 8週齢のCrlj : WIラットの嗅球を吸引して摘出し、情動過多の生じているラットを選択した。媒体、Trazodone 10 および 30 mg/kg、Maprotiline 10および 30 mg/kg、Amitriptyline 10および 30 mg/kg、Fluvoxamine 10および 30 mg/kg、Paroxetine 10および 30 mg/kg、Milnacipran 1および 3 mg/kgの投与 1、3、5および 7日の投与前および投与後2時間に情動過多を評価した。評価後、ブアン液で灌流固定後脳を摘出した。固定した脳を矢状断と冠状断に切り出し、セロトニン免疫染色(5-HT免疫染色、CHEMICON International)を行い、縫線核における 5-HT免疫染色陽性細胞数の計測を行った。 |
| 【結果】 | 1.情動過多の評価Trazodoneは、投与 1、3、5および 7日目の投与後において嗅球摘出ラットにおける痛覚過敏反応に対して有意な改善作用を示した。Maprotiline、Fluvoxamineおよび Milnacipraは投与 3日目以降の投与後において嗅球摘出ラットにおける痛覚過敏反応に対して有意な改善作用を示した。Trazodone、Maprotiline、FluvoxamineおよびMilnacipranは投与 7日目の投与後において嗅球摘出ラットにおける情動過多に対してすべての評価項目で改善作用を示した。
Amitriptylineおよび Paroxetineは嗅球摘出ラットにおける情動過多に対して改善作用を示さなかった。 2.病理組織学的評価 嗅球摘出により、縫線核におけるセロトニン陽性細胞数の減少がみられた。 Trazodone 30 mg/kgおよび Maprotiline 30 mg/kgの投与により、嗅球摘出ラットの橋縫線核におけるセロトニン陽性細胞数減少の有意な改善がみられた。 Fluvoxamine 30 mg/kgおよび Milnacipran 3 mg/kgの投与により、嗅球摘出ラットの正中縫線核および背側縫線核におけるセロトニン陽性細胞数減少の有意な改善がみられた。 Amitriptyline 10および 30 mg/kgの投与は、嗅球摘出ラットの縫線核においてセロトニン陽性細胞数に影響を与えなかった。 |
| 【考察】 | 嗅球摘出ラットにおいて認められた痛覚過敏反応は、抗うつ薬であるTrazodone、Maprotiline、Fluvoxamineおよび Milnacipranの投与によって有意に改善された。また、嗅球摘出ラットの縫線核においてみられたセロトニン陽性細胞数の減少は、これらの抗うつ薬の投与により有意に改善された。なお,Amitriptilineは情動過多スコアに影響を与えず、縫線核におけるセロトニン陽性細胞数にも変化が認められなかった。このことから,嗅球摘出ラットにおける痛覚過敏反応に対する抗うつ薬の改善作用には、縫線核のセロトニン細胞体数減少の改善に伴う上行性セロトニン神経系の正常化が関与していることが示唆された。
また、今回用いたほとんどの抗うつ薬は効果発現に日数がかかったが、Trazodoneにおいては投与 1日目から痛覚過敏反応の改善がみられた。Trazodoneは 5-HT2A受容体拮抗作用を持つことから、効果発現の遅い他の抗うつ薬との違いが現れたと示唆される。 以上のことから、急性の痛み除去には Trazodoneが有効であり、痛みにより生じる不安や抑うつ等の不快な情動の抑制に対して、抗うつ薬を併用して用いることは有効であると考えられる。 |
社会性敗北ストレスを用いたトレドミン錠(Milnacipran) の抗不安効果
第37回 日本神経精神薬理学会
2007年7月11~13日
於:札幌コンベンションセンター
| 【演題】 | 社会性敗北ストレスを用いたトレドミン錠(Milnacipran) の抗不安効果 |
| 【発表者】 | 中谷 晶子1)、村澤 寛泰1)、松田 智美1)、松澤 京子1)、豊吉 亨1)、山口 和政1)、巽 義美2)、巽 壮生2) 1) 株式会社日本バイオリサーチセンター、2) 株式会社 奈良病理研究所 |
| 【背景・目的】 | 社会的ストレスとして種内闘争を利用し、マウスに繰り返し攻撃を受けさせ、慢性的な不安の増強を示すモデル(社会性敗北ストレス誘発不安モデル)が報告されている。この負のストレスは脳内セロトニン神経系および中脳辺縁系ドーパミン神経の慢性的な変化によるものとされている。この社会性敗北ストレス誘発不安モデルは、報告はあるものの、広く知られていない。今回、この社会性敗北ストレス誘発の不安モデルの汎用性を高める目的で、病態モデルを明確にするために脳内モノアミンの変化および報告のないアミノ酸の変化を検討した。
また、セロトニン・ノルアドレナリン取り込み阻害薬(SNRI)であるMilnacipranの効果をあわせて検討した。 その結果、新規抗不安薬開発のためのモデル動物作製のヒントが得られたので報告する。 |
| 【方法】 | 敗北マウスの作製はSugiuraら1)の方法を改変して用いた。17週齢のC57BL/6J系雄マウスを侵入マウスとして用いた。12週齢のCrlj:CD1 (ICR)マウスの雌雄一対を飼育ケージで5週間以上同居飼育し、同居飼育中に仔が出来たペアの雄マウスのうち、同程度の攻撃性を示すマウスを選択して攻撃居住雄マウスとして用いた。社会性敗北ストレス負荷は、攻撃居住雄マウスの飼育ケージから雌マウスと仔を取り除き、そこに侵入マウスを入れて実施した。
攻撃居住マウスが侵入マウスに噛みつく行為を目視で計測し、20回噛みついた時点の時間(秒)を測定後、侵入マウスをケージから取り出し、飼育ケージに戻した。 社会性敗北ストレス負荷は1日~5日および8~12日 (開始日を1日とする) に1日1回行った。 14日に攻撃居住雄マウスのホームケージに侵入マウスを入れ、5回噛み付かれた時点で攻撃居住雄マウスと侵入マウスをケージ内で金網仕切りを用いて分け、物理的な接触がない状態で20分間置いて心理的ストレスを負荷した。 その後、高架式十字迷路上の不安行動を5分間解析した。 さらに、15日に同様に20分間の心理的ストレスを負荷し、その後、断頭して脳を摘出した。 脳は各部位に分割し、モノアミンとモノアミン代謝物含量、アミノ酸含量をHPLC-ECDシステムを用いて測定した。 |
| 【結果】 | 1.20回噛み付かれるまでの時間社会性敗北ストレスを負荷したControl群と比較してMilnacipran投与群で攻撃居住雄マウスに対して抵抗するマウスが出現し、20回噛み付かれるまでの時間は有意に延長した。2.高架式十字迷路上の不安行動社会性敗北ストレス負荷マウスは、高架式十字迷路上で不安行動を示し、この不安行動は Milnacipranの投与により有意に改善された。
3.モノアミンとその代謝物含量、アミノ酸含量 社会性敗北ストレス負荷マウスでは 5-HIAA/5-HT比、 MHPG/NE比、DOPAC/DA比、3-MT/DA比、HVA/DA比の有意な上昇が認められた。また、前脳皮質で Glu、Gly、AlaおよびGABA含量の有意な増加が、海馬で Glu、Ser、Gly、AlaおよびGABA含量の有意な増加が、扁桃体で Glu、AlaおよびGABA含量の有意な増加が認められた。一方、Milnacipranの投与で5-HTおよびNEの代謝回転に変化はみられなかったが、扁桃体で全アミノ酸の有意な減少が認められた。 |
| 【考察】 | 社会性敗北ストレス負荷マウスは不安行動を示し、5-HT、NEおよびDAの代謝回転の上昇、アミノ酸含量の有意な増加を示した。Milnacipranは社会性敗北ストレスにより増加したアミノ酸を有意に抑制したことから、Milnacipranの抗不安作用はアミノ酸神経系にも関与していることが示唆された。また、この社会性敗北ストレス負荷マウスは新規抗不安薬のためのモデルとして有用である可能性が示唆される。 |
| 【文献】 | 1) Sugiura. K., Yoshimura. H., Yokoyama. M., Psychopharmacology (Berl.) 1997 Oct;133 (3):249-55 |
D-cycloserine の前頭前皮質量に対する影響
第36回 日本神経精神薬理学会
2006年9月14~16日
| 【演題】 | 「D-cycloserine の前頭前皮質量に対する影響」 Effect of D-cycloserine on extracelluar level of glycine in the prefrontal |
| 【発表者】 | 村澤 寛泰、山口 和政、中谷 晶子、藤村 京子、豊吉 亨 株式会社日本バイオリサーチセンター |
| 【目的】 | 発達障害仮説に基づいた、新生児へのphencyclidine(PCP)投与による統合失調症マウスおよびラットモデルでは、前頭前皮質、中隔、視床および小脳で神経細胞とS-100陽性アストロサイトのアポトーシスの発現およびRMS (rostral migratory stream)中の増生した幹細胞ではアストロサイトに分化する細胞でGLASTの発現がみられた。新生児にPCPを投与した統合失調症モデルマウスにD-cycloserine (10 mg/kg)を皮下投与すると、PCPで発現した前頭前皮質、中隔、視床および小脳で神経細胞とS-100陽性アストロサイトのアポトーシスはみられなかった。このことから、発達障害仮説に基づいた統合失調症モデルではセリンおよびグリシンの関与が考えられたので、今回、神経細胞のアポトーシスのみられた部位である前頭前皮質にダイアリシスプローブを挿入し、D-cycloserine 10 mg/kgを投与したときの細胞外Glycine量の変化をグリシントランスポーター1阻害薬であるALX 5407と比較した。 |
| 【方法】 | Crlj:WIまたはSDラットにペントバルビタールナトリウムで麻酔した後、脳定位固定装置に頭部を固定後、ガイドカニューレを右前頭前皮質の位置(Teeth bar: -3.3 mm、bregmaより側方に2 mm、前方に1.5 mm)に25°の角度で硬膜下2.5 mmに挿入した。手術4日後、ダイアリシスプローブを挿入し、リンゲル液を1 μL/minの流速で灌流し、透析液を20分毎に回収した。透析液中のGlycine量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。 |
| 【まとめ】 | NMDA受容体のpartialアゴニストである D-cycloserine 10 mg/kgの皮下投与により前頭前皮質の細胞外Glycine量が有意に増加した。一方、D-cycloserine 1 mg/kgでは、前頭前皮質の細胞外Glycine量に有意な変化は認められなかった。グリシントランスポーター1阻害薬であるALX 5407 10 mg/kgの経口投与により前頭前の細胞外Glycine量が有意に増加した。一方、ALX 5407 1 mg/kgでは、前頭前皮質の細胞外Glycine量に有意な変化は認められなかった。また、D-cycloserineおよびALX 5407は前頭前皮質の細胞外SerineおよびAlanineに有意な変化を示さなかった。
以上、D-cycloserine 10 mg/kgの皮下投与およびALX 5407 10 mg/kgの経口投与により、前頭前皮質の細胞外Glycine量が増加することが確認された。 |